プロローグ - Moonsault Space
![]() 鏡リュウジさま 鏡さん、ムーンサルトレターの交換の申し出お受けくださり、まことにありがとうございます。ぼくがなぜ鏡さんと往復書簡を交わしたいと思ったか、理由は三つあります。 一つは、雑誌『鳩よ!』の今年の4月号で、作家の田口ランディさんと対談した時、彼女が「鏡さんと鎌田さんはとても似ている!」と断言したことに始まります。そういえば、鏡リュウジと鎌田トウジ、名前も似ていますね。 実は、ぼくはその話の前に「田口ランディとアイスランドの歌手ビョークがとても似ている!」と断言して、いっとき話が盛り上がりました。親兄弟が似ているというのとは違って、他人同士が似ているということはとても不思議なことだとぼくは思っていて、極論すれば「同じ星の住人かもしれない」(この意味はおいおい話すことにします)とさえ思っています。顔かたちが似ているということは、当然声帯の形態も似ているということで、声も似てくるし、思考様式や行動様式も似てくると思うのです。ぼくが仲間とともにやっている「東京自由大学」の会員の方に宗教学者の山折哲雄さんにそっくりの方がいるのですが、話をするたびに声も考え方も雰囲気も似ていることにいつもびっくりしてしまうのです。 これはDNAがどこかでつながっていて、似た構造を持っているということであるかもしれませんが、それだけではたとえば日本とアイスランドという地球の端と端に住んでいる二人が似ていることの説明にはなりません。また、環境がそうした類似形を作るということも、それはありうることでしょうけれど、田口ランディとビョークが似ていることの説明にはならないと思うのです。 正しい、説得力のある説明がほしいというわけではないのですが、この不思議な現象はぼくにとってはアプローチするに値する面白い「現象」なのです。これを「星との関係」で考えたいというのが、昔からぼくが持っていたアイデアです。「同じ星の住人」とか、「隣の星の住人」という言い方をぼくはよくしますが、それは何か同じ「メモリー」をかなり濃く共有しているということを言いたいがためのメタフォリカルな表現です。 そのような意味で、田口ランディとビョークは何か共通の「星のメモリー」をセットされているのではないかと思うのです。もしそうだとすれば、田口ランディさんが「鏡リュウジと鎌田トウジは似ている」というかぎり、そこに共通の「星のメモリー」があるのではないかと思ったりします。それは誇大妄想的なアイデアでしょうか? このホームページを立ち上げてくれた尚美さんも同じように、鏡さんとぼくが似ていると言いました。このことはぼくにとっては、あえて関西弁で言いますが、「おもろい縁」なのです。 第二に、鏡さんが自分の朝日カルチャーセンター横浜での連続対談に、どういう理由でか、ぼくを指名してくれたことの縁。社会学者の宮台真司、宗教学者の中沢新一、編集工学の提唱者松岡正剛という現代でもとびきり「おもろい人たち」の中にぼくを加えてくれたことはいったいどういうことかな、とおもろく思ったこと。それも6月30日という、神道では大祓いの行事を行う節目の時に横浜で対談するという縁の面白さをちょっと追及してみたくなったというわけ。 第三に、そのとき鏡さんから頂いたジェイムズ・ヒルマンの『魂のコード』(河出書房新社、1998年)があまりに「おもろく」て、ほとんどこれは昔からぼくが一貫して言ってきたことと同じではないかと思った縁。実はヒルマンをぼくはまだきちんと読んだことがなかったのです。心理学者の河合隼雄さんの長男で、京都大学教育学部の臨床心理学の助教授をしている河合俊雄君とは以前からとても親しくしていて、彼から彼の翻訳によるヒルマンの『元型的心理学』(青土社)をもらっていたのだけれど、読んでいなかったのです。俊雄君、ごめん。 というわけで、ヒルマン論などもぜひぶつけ合ってみたいなどと思って、往復書簡の提案をしたわけです。ヒルマンの「どんぐり論」は、ぼくの25年来の主張の「翁童論」とほとんど同じですね。びっくりしたなあ、もう。 それに加えて、ぼくの「神道ソングライター」としての市販初CDのタイトルが「この星の光に魅かれて」。くりかえしこのホームページで言っているように、ぼくにとって「2001年宇宙の旅」の衝撃は根源的に深く大きく、これも「星のインパクトとメモリー」から始まっているのです。 かくして、ムーンサルトレターの交換は、これから満月の夜に期を定めて、それを「フルムーン月並祭」として行いたいと思いますので、今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。 フルムーンサルトレターが満月の夜に飛び交うという「おもろい」趣向ですね。楽しく、気楽に、はちゃめちゃに、慎み深く(ぼくの頭のように分裂していますね)やりましょう。 2001年7月13日 聖金曜日 鎌田東二拝 |
記事がありません
-
2001/07 満月